『十三人の刺客』感想〜まずは稲垣吾郎。

敵役・吾郎のことばかり訊かれるのか、「残虐な極悪非道なところが吾郎ちゃんの性格にぴったりw」とかニヤニヤしながらインタビューで言ってる役所さんを見て
主役をも食いそうな吾郎の高評価なのか・・・と期待を高めつつ、観に行ってきました。


(もっと吾郎を映画の宣伝隊長として使えばいいのにな〜と思っていましたが
 敵役、脇役ということでか、事務所も控え目に?
 やっぱり主役の役所さんたちを立てたのかな?と)


いやあ。


三池監督作品好きーな私ではありますが、これは特に見る側も、力が要る作品だなあと。
三池さんの悪趣味な描き方にぽかーんとするのは好きなのですが
そんなレベルじゃない、目を背けたくなるシーンもあり・・・
それがないと、確かに始まらないんだけど・・・
(↑ちょっと、そうかな?と思ってる自分もいますが。三池だし←)


以下ネタばれ感想ですが
吾郎演じるのは、そんな目を背けたくなるほどの残虐非道な殿なのですが、そこには一応の殿なりの筋は通っていて。
そこが怖いような、すごいような。
つまり、尾張藩のお嫁さんを部屋に引き込んだのも、もてなす側の家で、ああいうふうに女性が廊下で自分を待っていたら、「俺に差し出したのか」と思って、もっていっちゃうのでは、とか。
あとで乗り込んできた旦那も、怒りのあまり殿を睨みつけるから→無礼な者、として斬った。
弓矢で弄ぶように殺した家族も、自分に逆らった者の一族だし、
(子供でも、大人になってから仇をなそうとするかもしれないし)
同じく、百姓一揆なんてことをしてお上に逆らってきたから、あの少女に手ひどい罰を与えた。
自分で書いてても怖いですが。
そこらへんのを適当に殺したり、さらったりするような狂人ではないんですよね・・・
上に立つものとしての豪気や鋭さも垣間見れる。
残虐性はゆがんだ戦闘性でもあるのか・・・太平の世でなかったら、その「力」はどう発揮出来ていたのか・・・


そうして・・・そんな殿を演じる吾郎の演技は、力が抜けている。
それが、殿がすべての者を「下郎」と自然に思っているのを、表現しきっている。
いざ「下郎」にやられる寸前まで、力がひとつも入ってない。


あと、言わでもがなだけど、美しい。
殿としての品格が、色っぽさが、悪魔的なものをより表現してる。
でも自然。気負っていない。まるで最初から「殿」だったみたいに。


泥まみれになって這いつくばる殿=吾郎は、やっぱりSMAPだからお得な気がしましたけどね(笑)
吾郎ちゃんがあそこまでー!!ってなるものね。
でも吾郎って最初から・・・演技のためだったら何でもやる、どう思われてもいい、という役者根性だけはある子だと思う。
(それにだんだん演技力が追いついていくのを見てきた幸せ。)
あの役を引き受けるときに葛藤があったのでは的意見も見かけたけど、あるわけないと思う。こんな役者冥利に尽きる役。


そうそう、海外バージョンでは、殿の犬食いのシーンがカットされているそうです。
・・・ありえんーー!
相方は、なくてもええんちゃう、と言ってたけど・・・
上品な佇まいに見えて、実は野生チックな本性をそういうとこでも描いてて面白かったのにな。
城の中に置いておくからああなったのでは・・・戦場で暮らす生活ならば、そこまで歪まない人生だったのではとまた考えさせるシーン。